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書く歩く(第18回 抒情という装置 ― ①)


第18回 抒情という装置 ― ①

 いきなりなんだが松本清張の文体はぶっきらぼうというか、愛想がない。たとえばこんなだ――

このあたり一帯は、まだ武蔵野の名残りがあって、いちめんに耕された平野には、ナラ、クヌギ、ケヤキ、赤松などの混じった雑木林(ぞうきばやし)が至る所にある。
〈『声』新潮文庫《傑作短編集(5)張込み》より〉

杉、檜(ひのき)が多かったが、榧(かや)、シデ、椿も少なくなかった。楠(くすのき)の大木には山藤が蔓(つる)を巻き、高いところにアケビがさがっていた。
〈『張込み』同より〉

この辺(あた)りになるとナラ、カエデ、クヌギ、カシなどの雑木林が到るところに残っている。旧(ふる)い径(みち)は、 その林の中に入っている。
〈『黒い福音』新潮文庫〉

 ちょっと報告書のようでもある。
 だが、こうした打ちっ放しコンクリートのような文章で構築された作品は色褪せることなく、清張の生誕100年記念ということもあいまって最近も頻繁に映像化されている。

 なにしろ清張はタイトルの付け方がうまい。『点と線』『地方紙を買う女』『一年半待て』『ゼロの焦点』『霧の旗』『天城越え』『黒革の手帳』いずれも思わず本を手にとってしまいそうだし、2時間ドラマのチャンネルを合わせてしまいたくなる。
 代表作である『砂の器』もそうだ。無常の暗喩であろうが、これは小説中に直接登場するものではない。
 だが、映画化された『砂の器』(’74年、野村芳太郎監督)は、子どもが砂浜で、まさに砂で器をつくろうとする手遊(てすさ)びがオープニングシーンになっている。
(つづく)

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上野 歩(うえの・あゆむ)

1962年東京生まれ。作家。『恋人といっしょになるでしょう』(集英社)で小説すばる新人賞受賞。文芸社にて執筆アドバイザーを務める。新感覚サイコミステリー『鳴物師 音無ゆかり 事件ファイル』を文芸社より刊行。
公式HP《上野亭かきあげ丼》
http://www.uenotei.com



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