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書く歩く(第28回 タイガーマスクの孤独)


第28回 タイガーマスクの孤独

“タイガーマスク運動”なる言葉が巷を賑わせた。『タイガーマスク』は、他の梶原一騎作品と同様に小学校時代、テレビアニメーションで観た。『巨人の星』や『あしたのジョー』を原作でも読んだのに対し、『タイガーマスク』は読んでいない。なら、好きではないのかというと、そうでもないと思う。
『巨人の星』は主人公の塩ビ人形を持っていたし、24色入りの色鉛筆の平たい缶ケースには、矢吹丈と力石徹の対戦場面(アニメ版)が描かれていた。ちなみに、これとおなじ画が、現在、自宅からほど近い練馬高野台駅構内の壁を飾っていて、不思議な縁を感じている。西武池袋線沿線は、旧虫プロや、東映アニメーションがあることから、アニメ路線をアピールしている。練馬高野台に『あしたのジョー』(これも虫プロ作品)があるのは、作画したちばてつや氏の自宅が近いからで、大泉学園駅には松本零士氏が居住することから『銀河鉄道999』に登場する“車掌”の像がある。
 話をもどすとキャラクターグッズこそ持っていなかったものの、自分で作ったタイガーマスクのお面(ボール紙に書いて切り抜いたのを輪ゴムで耳にかける)をかぶったりして、それなりに愛好する番組であった。
 いや、当時の少年は、みな梶原作品の洗礼を受けている。僕がジャイアンツファンになったのは、墨田区の実家近くに王貞治氏の生家の中華料理屋さんがあったからというより、『巨人の星』の影響が大きい。銭湯の下足フダも、飛雄馬の背番号の16を選んでいた。
 さて、ここで『タイガーマスク』についてもうすこし検証してみると、伊達直人は飛雄馬とジョーに比べ、圧倒的に孤独である。孤児という設定はジョーとおなじだが、直人には、丹下段平とマンモス西がいない。終盤、虎の穴時代をともに過ごした親友・大門大吾も敵となって立ちはだかる。互いに高め合うライバルもおらず、ただひたすら刺客として現れる覆面レスラーらと、無間地獄のような死闘を繰り返すばかりである。
 ひとりぼっちのヒーロー伊達直人は、彼が唯一ぬくもりを感じる孤児院への寄付を欠かさなかった。
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上野 歩(うえの・あゆむ)

1962年東京生まれ。作家。『恋人といっしょになるでしょう』(集英社)で小説すばる新人賞受賞。文芸社にて執筆アドバイザーを務める。新感覚サイコミステリー『鳴物師 音無ゆかり 事件ファイル』を文芸社より刊行。
公式HP《上野亭かきあげ丼》
http://www.uenotei.com



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