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書く歩く(第32回 名台詞の研究)


第32回 名台詞の研究

 毎朝、エアロバイクを30分こぎながら録画した映画を観る。アクション、ラブロマンス、ミステリ、SF、ブロックバスター、B級、ビッグ・バジェット、なんでも観る。とりあえず観る。そのなかで、ちょっといい台詞に出会ったりすると得をした気分になる。

 元夫君ジェームズ・キャメロンの『アバター』とのオスカー・ダービーを競り勝って作品賞、監督賞を受賞したキャスリン・ビグローの『ハート・ロッカー』(‘08年)。
 バグダードで爆弾処理を行うジェームズ(ジェレミー・レナー)は、命知らずの行動で隊のメンバーを翻弄する。そんな無謀さに彼を駆り立てるものがなんであるか、具体的に説明されることはない。
 任務明け、家族と過ごすジェームズは、おもちゃで遊ぶ幼い息子に話しかける。「おまえには好きなものがいっぱいある。だが、齢を取ると、好きだったものもそれほど特別じゃなくなる。それがただのブリキの箱とぬいぐるみだと気づく」そうして言う、「パパが好きなものはひとつだけだ」。どうやらそれは、眼の前にいる我が子のことではなさそうだ。そう、彼が好きなものは戦場なのだ。ラスト、彼はまたそこにもどってゆく。

 ほぼ1年に1本のペースで充実した作品を送り出す老雄クリント・イーストウッド。『インビクタス/負けざる者たち』(‘09年)は、自国開催するラグビーワールドカップの代表チームを通じて、人種を越えた国民の団結をはかろうとする南アフリカ共和国初の黒人大統領ネルソン・マンデラ(モーガン・フリーマン)の姿が描かれる。
 マンデラが、お茶に招いたチームのキャプテン(マット・デイモン)にきく、「足首のけがの具合はどうかね?」
「完璧な状態で戦えることなどありません」
「そうか、スポーツも人生もおなじだ」
 貧困地区の黒人の子どもたちにラグビー指導するというボランティアに不平を唱えるメンバーにキャプテンが言う。「おれたちはいまやラグビーチーム以上の存在だ。南アは変わる。おれたちも変わらなければ」
 そう、変わらなければ。



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上野 歩(うえの・あゆむ)

1962年東京生まれ。作家。『恋人といっしょになるでしょう』(集英社)で小説すばる新人賞受賞。文芸社にて執筆アドバイザーを務める。新感覚サイコミステリー『鳴物師 音無ゆかり 事件ファイル』を文芸社より刊行。
公式HP《上野亭かきあげ丼》
http://www.uenotei.com



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