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書く歩く(第34回 『ウルトラQ』)


第34回 『ウルトラQ』

 この夏、カラーライズされたDVD-BOX『総天然色ウルトラQ』や豪華本が発売された。
『ウルトラQ』が最初に放送された時、僕は4歳だったので、記憶にある断片的な映像は再放送時のものか。いや、昔から大事なことは覚えていない代わりに、ヘンなことは覚えているから、4歳時にブラウン管テレビで観た記憶なのかもしれない。
 DVDは買わなかったけれど、ハイビジョンリマスターされた『ウルトラQ』を衛星放送で観た。モノクロ版である。シリーズ全作ではないが、けっこうな本数をエアチェックした。
 興味の対象は、登場する怪獣よりも、物語の背景となる当時の街並みや風俗である。そういう意図で観察してみると、マンモスフラワーがニョキニョキと屋上を突き破って現れるクラシカルな建築は、アーチ型窓と屋上部分の装飾が施されたひさしに特徴のある京橋の明治屋本社ビル(現存)ではないだろうか。また、主人公のパイロット万城目淳(まんじょうめ・じゅん)が勤める民間航空会社の取引先がテナントになっているのは、新丸の内ビルヂング(いまある超高層の新丸ビルではなく、建て替え前の8階建てのほう)だ。聖橋方向に見る御茶ノ水駅の神田川沿いにあるホームのたたずまいは現在とあまり変わらないが、進入してきた総武線の車両はブドウ色である。
 子ども時代に気づかなかったといえば、万城目がロレックスをしている(ペギラが出現する回の、南極基地のシークエンスで大写しになる)こともそうだ。パイロット姿でないときには、洒落たツイードのジャケットを着て、オープンカーを乗り回し、なかなかに優雅な暮らしぶりである。
 最終回で、そのオープンカーの助手席に新聞社のカメラマン江戸川由利子を乗せて街灯もまばらな夜の道をひた走る。由利子は冗談とも本気ともつかない口調で、「あなたとあたしだけの世界へ行こう」と言う。「電話のない所、締め切りのない所、交通地獄のない所」へと。「借金取りのいない所」と万城目が茶化すと、「それならバーのない所ね」と由利子も混ぜ返す。
 当時、借金の元はバーであったのだ。“交通地獄”という言葉はもはや死語となったが、東京の交通事情は今もそのままである。



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上野 歩(うえの・あゆむ)

1962年東京生まれ。作家。『恋人といっしょになるでしょう』(集英社)で小説すばる新人賞受賞。文芸社にて執筆アドバイザーを務める。新感覚サイコミステリー『鳴物師 音無ゆかり 事件ファイル』を文芸社より刊行。
公式HP《上野亭かきあげ丼》
http://www.uenotei.com



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