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書く歩く(第35回 鳴物師 音無ゆかり 事件ファイル)


第35回 鳴物師 音無ゆかり 事件ファイル

「〈音聞き〉をして、〈音消し〉をしなさい」――明け方の夢の中で、そんな声を聞きました。神懸かったことを言うようですが、それがこの作品を書くきっかけでした。
 夢の中には「鳴物師」という言葉も出てきました。耳慣れない言葉で、辞書を引いてみると、「長唄や歌舞伎下座音楽で、鳴り物を扱う囃子方(はやしかた)。出囃子の場合、雛段(ひなだん)の下段に並ぶので下方(したかた)ともいう。」とあります。辞書にも載っている言葉ですから、もしかしたら、何かの折に耳にし、頭のどこかに残っていたのかもしれません。
 なんだ、実際にある言葉だったのか……と、がっかりした反面、違う意味合いで使えないこともないな、と思い直しました。つまり、件(くだん)の〈音聞き〉をし、〈音消し〉をする人物の称号として用いようと思ったのです。
 主人公の名前は、すんなり決まりました。音を消すので、音無ゆかり。巫女的な存在なので、齢は二十(はたち)前――子どもではなく、大人とも言い切れない18歳にしよう。
 それからは、音無ゆかりが〈音聞き〉をし、〈音消し〉をする事件についてひたすら考えました。しかし、その事件は、霊視したり、呪文を唱えたりして解決されるものであってはなりません。読者が感情移入できるリアルさが必要でした。生活のにおいがなければいけないのです。そのプライベートな空間に、ゆかりは、ときに土足で踏み入ることもあるでしょう。
 彼女には、頼りになるサイドキックが必要でした。バー「パン・アメリカン」のマスターで、ゆかりの後見人となる綾瀬恭一郎と、バーテンダー・入来亮のキャラクターを創造するのは楽しい作業でした。と、同時に、ストーリーを、ゆかり、綾瀬、亮の三視点で展開する構成のプランも出来上がりました。3人それぞれの見方により、事件は多面性を帯びるし、何より綾瀬と亮の視点から、ゆかり自身の背後に潜む秘密に徐々に接近することもできます。
 物語の世界観の構築にはコミックスやサイコミステリーを強く意識しました。ニューエンターテインメント『鳴物師 音無ゆかり 事件ファイル』をお楽しみいただければ幸いです。

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上野 歩(うえの・あゆむ)

1962年東京生まれ。作家。『恋人といっしょになるでしょう』(集英社)で小説すばる新人賞受賞。文芸社にて執筆アドバイザーを務める。新感覚サイコミステリー『鳴物師 音無ゆかり 事件ファイル』を文芸社より刊行。
公式HP《上野亭かきあげ丼》
http://www.uenotei.com



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