自費出版・流通出版・執筆のことなら文芸社へ

自費出版・流通出版は気軽にSite執筆・出版の応援ひろば
よむ人からかく人へ。ここは表現する人を応援する著者のための『ひろば』です。ご相談・お問い合わせは…「なんでも相談室」へ

執筆・創作・自費出版・流通出版のことなら【気軽にSite 執筆・出版の応援ひろば】トップへ > 書く歩く(第47回 動かない新幹線)

書く歩く(第47回 動かない新幹線)


第47回 動かない新幹線

  急ぐ旅行ではなかったので、東京駅から東海道新幹線ひかりに乗った。到着しては清掃され、居住まいを正して折り返し慌しく出発してゆくのぞみと違って、入線してきた東京駅始発のひかりは、出発まで20分ほどゆったりとホームに留まっていた。
 僕は、止まっている新幹線に早めに乗り込み、出発を待っているひと時が好きだ。だから、いつも余裕を持って東京駅に行く。間違っても、出発直前の車両に飛び乗るなんてことにはなりたくない。だって、お楽しみを逃してしまうことになるから。

 今日は「朝のおむすび弁当」というのを構内の売店で買った。野沢菜とゆかりのおむすびが2つ、焼き魚は西京味噌に漬けたシャケ、玉子焼き、かまぼこ、鶏の黒胡椒焼き(これがうンまい)、赤いウインナーに、黄色いたくあん。セットで買うとペットボトルのお茶が安くなる。
 しかし、このお弁当、新幹線が止まっているうちにはけっして手をつけない。これは僕だけではないと思う。皆さん、不思議と乗っている列車が動き始めてから駅弁の折りを開くようである。
 ちなみに東に向かう新幹線の場合は、東京駅出発後間もなく地下に入り、再び地上に出るのは日暮里を過ぎたあたりだから、弁当タイムはそこからということになる。

 さて、では、動き出す前の新幹線列車に座っていてなにをするかといえば、なんにもしないのである。でも、なんか楽しい。それは、これから始まる旅への期待があるからだろう。
 止まっている新幹線は、映画が始まる前の映画館にいるのに似ている。
 もちろん、上映開始前の映画館のシートに座っているのも好きな僕は、早めに劇場に行っている。

 折り返し便に乗る場合、車内清掃が終わるのをホームで待っていないといけない。なにかの雑誌で、乗客はゴミを隠したがる習性があるという清掃スタッフの方の談話を読んで、けだし名言だと思った。
 僕は早く止まっている新幹線に乗りたいので、ゴミは持ち帰るようにしている。

←前回へ | 
次回へ→


上野 歩(うえの・あゆむ)

1962年東京生まれ。作家。『恋人といっしょになるでしょう』(集英社)で小説すばる新人賞受賞。文芸社にて執筆アドバイザーを務める。新感覚サイコミステリー『鳴物師 音無ゆかり 事件ファイル』を文芸社より刊行。
公式HP《上野亭かきあげ丼》
http://www.uenotei.com



バックナンバー