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書く歩く(第49回 恐怖の一夜 )


第49回 恐怖の一夜

 毎日暑いので、涼しくなる話をしようと思う。
 第37〜40回で『見える人』というテーマを扱って、僕自身は霊視とか占いとかは信じないほうだと書いた。信じていないとはいえ、ホラー映画なんかは、怖くて観ていられない。
 やはり第33回『R指定』で、アメリカのモダンホラー作家、スティーヴン・キングのことを書いている。キングの数ある映像化作品の中でもっとも怖いのはといえば、迷わず『キャリー』(1976年)を上げたい。テレキネシスを持つ少女がいじめを受け、その能力を爆発させてついには自分が住む田舎町を破壊してしまう物語だ。
 今は大御所となったブライアン・ディ・パーマが監督しているのだけれど、演出にも、出演者(ジョン・トラボルタがキャリーをなぶり者にする不良生徒の役で名を連ねている)にも若いエネルギーが満ちている。
 で、衛星放送でかかったので、ブルーレイに録画して、久し振りに観ようと思った。けれど、怖くて、どうしても観ることができずに、そのまま消してしまった。
 臆病なのである。
 そんな僕が、身も凍るような恐怖体験をした。もう15年以上も前のことであるが、夫婦で秩父を旅行した。西武池袋線沿線に引っ越して、その奥座敷とも言うべき秩父にいちどくらい泊まってみてもよいだろうと考えたのだ。
 老舗の鉱泉旅館で、1階の廊下からちょっと下がったところにある、渓流沿いの離れのような部屋に宿泊した。きれいな和室で、申し分なかった。広い窓から林の中にお地蔵様が一尊見えた。
 ひと風呂浴び、料理とお酒を楽しみ、また鉱泉に浸かって、寝静まった頃だ。深夜、部屋の外の階段をギシッギシッと何者かが下りてくる。しかし、部屋の手前で立ち止まり、再び階段を上ってゆく。しばらくして、また階段を下りてきた。ギシッギシッギシッ……
 僕は金縛りにあって、身体はピクリとも動かせなかった。怖くて自分がそうしたくないのか、目蓋を開けることもできない。
 翌朝、隣で眠っていた妻にも確認したが、彼女も同じ体験をしていた。
 これは、はたしていったい?!
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上野 歩(うえの・あゆむ)

1962年東京生まれ。作家。『恋人といっしょになるでしょう』(集英社)で小説すばる新人賞受賞。文芸社にて執筆アドバイザーを務める。新感覚サイコミステリー『鳴物師 音無ゆかり 事件ファイル』を文芸社より刊行。
公式HP《上野亭かきあげ丼》
http://www.uenotei.com



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