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書く歩く(第51回 名台詞の研究−③)


第51回 名台詞の研究−③

「ボクは不器用だが、約束は守る」――先頃封切られた『幸せの教室』の中でのトム・ハンクスの台詞である。この作品で、ハンクスは、主演・監督のほか共同製作、共同脚本も務めている。
「不器用だが、約束を守る男」というのは、これまでハンクスが演じ続けてきたキャラクターの代名詞だ。もうトム・ハンクスとは、そのまんまそういう人なのだというイメージがある。どんな逆境に立たされても、ユーモラスで前向き。その姿勢は常に居丈高でないから、長身なのに、スクリーンでは小柄に見える。
 この『幸せの教室』でも、プロデューサーとしてハンクスは自分のセールスポイントを十分に認識していて、「不器用だが、約束を守る男」というハマリ役を演じている(映画の出来はイマイチだったけど)。
『ダ・ヴィンチ・コード』と『天使と悪魔』で演じた、ミッキー・マウスの腕時計を愛用し、オタクで、どこか子どもっぽさを感じさせるロバート・ラングドン教授も面白かったが、僕にとってハンクスのベストは『プライベート・ライアン』のミラー大尉である。ミラー大尉も、やはり「不器用だが、約束を守る男」だ。
 スゴイとは聞いていたが、冒頭のノルマンディー上陸作戦を描いた20分間は、想像以上の凄惨さで、観客はスピルバーグの手によって完全に戦場に投げ出される。
 この作戦で3人の息子を失ったライアン家の母親のもとに、戦地に残る末の息子を帰還させるべく任務がミラー大尉に課せられる。いわば軍のプロパガンダである。
 途中、ミラーが率いる部隊は、さまざまな戦闘に遭遇する。それにいちいち荷担するミラーに向かって部下が、「我々の本来の任務は、ライアン二等兵を帰すことではないのですか?」と不平を述べる。するとミラーが言う、「我々の本来の任務は、軍の勝利だ」
 ミラーの郷里での経歴は謎だ。教師だと語る場面があるが、本当かどうかは分からない。見つけ出したライアン二等兵(マット・デイモン)に、庭でバラの手入れをする妻の思い出話をするが途中でやめてしまう。きっと、戦場にいる自分とは何者なんだと思ったのだろう。
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上野 歩(うえの・あゆむ)

1962年東京生まれ。作家。『恋人といっしょになるでしょう』(集英社)で小説すばる新人賞受賞。文芸社にて執筆アドバイザーを務める。新感覚サイコミステリー『鳴物師 音無ゆかり 事件ファイル』を文芸社より刊行。
公式HP《上野亭かきあげ丼》
http://www.uenotei.com



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