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書く歩く(第66回 忠臣蔵‐③)


第66回 忠臣蔵‐③

 吉良上野介といえば、時代劇でも代表格のヒールであるけれど、これを演じた俳優は後に、スーパー好々爺の水戸黄門を出世魚のように演じる運命が待っている。
 代表格は東映時代劇で何度も上野介を演じている月形龍之介がそうだ。大河ドラマ『元禄繚乱』では石坂浩二が上野介を演じ、後にテレビシリーズで凝り性の石坂らしく「史実に基づいた光圀を」との意向で白ひげのない水戸黄門になった。
 西村晃は、テレビで『水戸黄門』を演ってから映画『忠臣蔵 四十七人の刺客』で上野介になっている。

 さて、子どもの頃から不思議に思っていたことがある。『忠臣蔵』という言葉の意味である。
 丸谷才一は『忠臣藏とは何か』(講談社文芸文庫)の中で、次のように書いている。「『仮名手本忠臣藏』といふ題を分析してみよう。これはいままで、みんなが何となく不問に付してゐた七文字だが、それを敢へて検討することは、忠臣藏といふ芝居の解釈にはもちろん、忠臣藏といふ事件の把握にもずいぶん役立つはずである。」僕も、『忠臣蔵』の「蔵」って、どういう意味かな? と思ってきたので、この項を興味深く読んだ。丸谷氏はこの「蔵」について、次のように検証している。「①大石藏助の藏の字」「②火災のときびくともしない土藏造り」「③神座としてのクラ」。
 で、僕はというと、「蔵」は、やはり内蔵助の「蔵」ではないかと思うのだ。「忠臣蔵」は、人形浄瑠璃、歌舞伎の演目『仮名手本忠臣蔵』の通称だが、主人公を大星由良助と加工し、謀反人をヒーローとする配慮を公儀に対して行いつつ、題名には内蔵助の「蔵」をちゃっかり盛り込んだのではないのか、と。
「仮名手本」は、いろは47文字を四十七士に見立てている。いろは歌を7文字ずつ区切ると、「とかなくてしす(咎なくて死す)」なる言葉が浮かび上がってくるという暗号説がある。
「土蔵」「神座」としての「蔵」の向こう側に、忠臣・内蔵助への供養として手向けられた隠し文字が「忠臣蔵」というタイトルではないだろうか。
(忠臣蔵―おわり―)

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上野 歩(うえの・あゆむ)

1962年東京生まれ。作家。『恋人といっしょになるでしょう』(集英社)で小説すばる新人賞受賞。文芸社にて執筆アドバイザーを務める。新感覚サイコミステリー『鳴物師 音無ゆかり 事件ファイル』を文芸社より刊行。
公式HP《上野亭かきあげ丼》
http://www.uenotei.com



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