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書いた人のわ(「ゆびとことば」 杉本響子)

「ゆびとことば」 杉本響子
 折り紙をみていた。あわされてゆく紙を。ひらかれてゆく紙を。ちぎられてゆく紙を。テーブルに散らばっている色とりどりの紙を。それはなんだか言葉の断片のような気もするし、そんなんじゃないような気もする。

 騒々しく、奇声と怒声と唄とわらいに満ち満ちた日々の中で、言葉の効力について、時々考えることがある。どれだけ言葉を尽くしてみても、気持ちの悪いパズルみたいに、ちっともあわさらないことばかりだから。

 いつも、私のあたまの中には、二種類の疑問符があって、答えを欲しがっているものと、そんなのいらないよ的なものとが、ぷかぷか混ざることなく浮かんでいる。
 答えのいらない疑問符は、とても小さな、写真や文集やみんなの思い出話なんかにはでてくることのないくらい小さな記憶を持っていて、私がいくらか弱ったときにだけ、すっとわき腹をつついて見せてくる。わすれてしまうことに臆病な私は、小さな記憶を太らせたくて、塵のように漂う言葉を、目を凝らして見つけては、カチ、カチ、とパソコンの中に捕らえてゆく。
 そうして、薄くて軽い小さな記憶は、私が捕まえた言葉を纏い、じょじょに色味をおびて、ふっくらとしてくる。私がしていたのは、そんな地味でひそかな作業だった。読んでもらうことなど、考えていなかったはずなのだ。

 かけらのつまった紙束を送ることは、決心のいることでもあった。でもあの時の私は、私のことを知らない誰かに、私を評価してほしかったのだと思う。
 日々にいて、私を呼んでくれている声にこたえながら、私も枯れるほど呼びかけていたような気がする。喉をふるわすことはせず、ただゆびさきだけに集中をして。

杉本響子
1980年5月30日生まれ。
東京都出身。
京都造形芸術大学通信教育部中退。

■著書
『葡萄ジュウス』(新風舎、2007年)

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