自費出版・流通出版・執筆のことなら文芸社へ

自費出版・流通出版は気軽にSite執筆・出版の応援ひろば
よむ人からかく人へ。ここは表現する人を応援する著者のための『ひろば』です。ご相談・お問い合わせは…「なんでも相談室」へ

執筆・創作・自費出版・流通出版のことなら【気軽にSite 執筆・出版の応援ひろば】トップへ > 書いた人のわ(『恨解』 長井朝美)

書いた人のわ(『恨解』 長井朝美)

『恨解』 長井朝美
 韓国の光州に旅行した際、知人の案内で国営墓地を訪れた。天に向かって合掌する手を模したモニュメントの下で、自分と同年代の男性が祈りを捧げていた。やがて彼は左足を引きずって歩き始めた。
 訳もわからず連れてこられたその墓地には、光州事件で亡くなった人々が弔われていた。
 知人は次に私をとある建物に連れて行き、そこでビデオと写真を見せてくれた。息が止まるほどの残虐な映像と写真。しかし、それから目を背けることはできなかった。墓地であった男性が、なぜ祈っていたのか、なぜ足を引きずっていたのかが想像できた。同時に、小説にまとめたいという思いが頭の中で熱く弾けた。
 しかし時間がなかった。仕事の合間の僅かな時間に資料を読み、パソコンに文字を打ち込んだ。少しずつ文字の分量は増えていったが、最後の行を打ち終えるまでに3年かかった。原稿用紙にして500枚近い分量になっていた。
 私は以前、大手出版社から本を一冊出している。光州事件の原稿もそこへ持ち込んだ。しかし答えは「ノー」だった。原稿をまともに見てもらうことさえできなかった。理由はいくつかあった。まず、日本人が他国の抗争に興味を持たないだろうということ。そして、私が実際に光州事件を体験していないということ。当事者が書いたものであればおもしろみも出るのだが、ともいわれた。
 原稿は宙に浮いたまま、さらに3年が経過した。世に出せるような代物ではないのか、と自信もなくなってきた。
 ある日、新聞を見ていて文芸社の広告が目についた。原稿に対してきちんと講評を出すとあった。自分の書いたものが果たしてほんとうに駄目なのか、縁もゆかりもない人間に答えて欲しかった。
 そして送られてきた講評に励まされ、今私は「恨解」と題された本を手にしている。
 さんざん迷った挙げ句に原稿を郵送したあの日がなければ、私がこの本を手にすることはなかっただろう。

長井朝美(ながいあさみ)
千葉県出身。
貿易会社、編集プロダクション勤務を経て、現在はフリーライター。

■著書
『子供を誰にあずけますか』(新潮社)

←前回へ | 
次回へ→


バックナンバー


文芸社の気軽にSiteへお越しの方へ
【気軽にSite執筆・出版の応援ひろば】では自費出版・流通出版のご相談を随時受付けています。また出版だけではなく執筆・創作のヒント、きっかけになる情報の提供もしております。文芸社の気軽にSiteでは書きたい人、これから執筆・出版に挑戦したい人の活動を本気で応援しています。