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執筆虎の巻(童話編/第一回 『童話を書く上での心得とは?』)

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「色泥棒」
ペンネーム  久遠
 青い海と豊かな緑のある暖かな南の島には、一年中色とりどりの花が咲き、たくさんの動物たちが住んでいました。
 島に住むケオラ君は、今日も日課であるお散歩をしています。
「サルさん、おはよう。」
「おはよう、ケオラ君。いいお天気だね。」
 いつもと変わらない平穏な日曜日の朝です。

 するとそこに、大きな掃除機を持った不審な男が現れました。
「なんだか見ない顔だな。」
 ケオラ君が様子を窺っていると、男は湖のほとりで足を止め、そこで骨を休めていたフラミンゴに突然大きな掃除機を向けました。
「なんだなんだ? あの男は何をしているんだ?」

 男をじっと観察していたケオラ君は、目を疑いました。なんと男は大きな掃除機でフラミンゴのきれいなピンク色をみるみる吸い上げてしまったのです。
 色がすっかりなくなったフラミンゴは、まっしろけ。その後も男は島中のあらゆるものに次々と掃除機を向けて、花の赤色、キリンさんの黄色、ついには海の透明な青色まで、どんどん吸い取っていきます。
「大変だ。色泥棒だ!!」

 一部始終を見ていたケオラ君は、こっそり男のあとをつけて、彼が昼寝をしている間に掃除機に近づき、色を逃がそうとしましたが、なかなかうまくいきません。
 そうこうしているうちに男の行方を見失ってしまったケオラ君は、彼をおびき出す何か良い方法はないかと頭を捻りました。
「うーん……。そうだ!」
 名案を思いついたケオラ君は、早速街に買い物に出かけてゆきました。

「いい匂いだね。すっかりお腹がすいてしまったよ。」
 数時間後、ケオラ君の家の前には掃除機の男が立っていました。
 作戦が成功したのです。

「ねぇおじさん。どうして島の色を盗むの? みんな困っているよ。元に戻してくれない?」
 ケオラ君が頼むと、男は言いました。
「わかったよ。でも僕は色遊びが好きなんだ。この島は色が溢れていて素敵だね。たまにでいいから、この島の色を貸してくれないかい? 僕の仕事は虹を作ることなんだ。」
「そっか! おじさんは色泥棒じゃなくて、虹作り屋さんだったんだね。」

 ご馳走の匂いにつられて集まっていた動物たちはこれを聞いて胸が躍りました。
「ボクは虹が好きだよ。」
「虹を近くで見てみたいな。」
「虹を作るお手伝いならお安いご用だ。」

 その夜、島の動物たちと男は共にケオラ君の作った料理を楽しみ、宴は深夜にまで及びました。
 この日を境に、この島はときどき色のない島になり、そんな日は決まって動物たちの歓声と笑顔が溢れるのでした。

 今回の作品は、南の島を舞台にした童話作品じゃ。一年中花が咲き、いろいろな動物たちが仲良く暮らす、まさに楽園のような場所じゃが、そこにちょっとした事件が起こる。なんと花や動物の色を盗む男が現れたというわけじゃ。色を盗むという発想、そして、それが実は虹を作るためだったというアイデアがなかなか面白いのう。怪しげな男も悪い人物ではないことがわかり、島のみんなが喜ぶラストも清々しく、読後感のよい作品となった。色彩豊かな世界が描かれたストーリーだけに絵本にしても面白そうじゃな。
 話は上手くまとまっておるが、ただ、ちょっと気になるところがあるのう。そもそも、この作品はどのぐらいの年齢の読者を想定して書いたものなんじゃろう。話の内容から推測すると、未就学児童からせいぜい小学校低学年ぐらいが対象かと思われるが、そうだとすると、ちょっと漢字が多すぎるじゃろう。小学校の低学年でもさほど多くの漢字は学んでおらんことを踏まえて、難しい漢字はひらがなにするなど表記に配慮したほうがいいじゃろうな。それと、幼い子どもにとってはわかりにくい表現もあるのぉ。「日課」「平穏」「不審」「骨を休める」「一部始終」「宴」といった言葉は、子どもにはあまり馴染みのないものじゃろう。例えば、「今日も日課である」は「今日もいつものように」、「不審な男が」は「あやしい男が」のように表現すればよいじゃろう。読めない漢字やわからない言葉があると、小さな子どもだったら飽きてしまうかもしれん。ストーリーを楽しんでもらうためには、スムーズに読み進めてもらうための心配りも必要ということじゃな。
 また、幼い読者に読ませる作品の場合、話のなりゆきもわかりやすく描かなくてはならん。この作品でちょっとわかりにくいのは、「名案を思いついたケオラ君は、早速街に買い物に出かけてゆきました」から、あとの展開じゃ。ケオラ君の作戦はご馳走で男をおびき出すことだったわけじゃが、説明が不足しているため、すぐにはわからんのぉ。買い物に出かけたという直後に、「いい匂いだね」と男が現れるのも唐突じゃ。特に幼児向けの作品の場合は、場面と場面のつながりや5W1H(いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのように)に気を配ったほうがいい。同じことはラストにもいえる。色のない島になって動物たちが喜ぶのはなぜか。それは虹が架かるからじゃな。ここでは「なぜ」の説明が不足しておるわけじゃ。ここはやはり説明しておくべきじゃろうな。
 童話を書く上では、子どもの目線で、子どもに楽しんでもらうことを考えることが大切じゃ。子どもがどのように読むか、何を感じるかということをいつも意識することじゃな。厳しいようじゃが、書き手が面白いと思って創作した童話でも、読み手の子どもが楽しめなければ、つまらない童話ということになってしまうからのぉ。

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