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執筆虎の巻(童話編/第四回 『教訓やメッセージをどう表現するか?』)

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「バースデープレゼント」
ペンネーム  烏山 ちとせ
 いつもより早く目をさましたタカシくんは、部屋を出ると、つまさき立ちで階段を下りてゆきました。玄関まで来ると、昨夜のうちにかくしておいたスペリオルマン人形を下駄箱からとり出し、そっとドアを開けました。外の空気は冷たく、パジャマ姿のタカシくんはみぶるいしましたが、ここまできたら上着をとりにもどるわけにはいきません。四つ角のゴミ集積所までいきおいよくかけ出しました。
 集積所にはゴミ袋がすでにいくつか置かれています。タカシくんは周囲に人がいないのを確認し、そのひとつに人形を押し込むと来た道を急いで引き返しました。そうして玄関のドアを開けようとノブに手をかけたしゅんかん、
「こんな朝早くに何してるの?」
 と声がしました。あわててタカシくんが声のする方に目をやると、二階のベランダからこわい顔でお母さんが見下ろしていました。
「え、えっと……あ、散歩、散歩だよ」
「うそおっしゃい。お母さん、ここでずっと見てたんだからね」
「……だって、僕が欲しかったのはスペリオルマンじゃなくて、ゲームだもん」
 と、タカシくんは唇をとがらせました。
「いい加減にしなさい!」
 お母さんのどなり声に、タカシくんは思わず肩をすくめました。
「せっかくおばあちゃんがタカシのために買ってくれたプレゼントでしょう!」
 すると、眠そうな目をしたお父さんがベランダに出てきました。
「おーい、朝っぱらから大声出すなよ。近所迷惑だろう」
「ちょっとあなた、聞いてください。タカシったら、昨日お母さまからいただいたプレゼント捨ててきちゃったんですよ。本当はゲーム機が良かったんですって」
 お母さんがそう言うと、お父さんは驚いたようすでタカシくんにたずねました。
「おいタカシ、お母さんのいま言ったこと、本当か?」
 タカシくんは、うなずきました。
「もらった時に、ちっとも喜んでなかったから、気に入らなかったのは何となく分かっていたけど、だからって捨てるのは絶対にだめだ。他人の好意を踏みにじる最低のおこないだぞ。お父さんはタカシをそんな子に育てたおぼえはない。いいか、だいたいプレゼントってのはな、大切なのは中身じゃないんだ。プレゼントしてくれた行為自体に感謝するものなんだ。お前も四年生なんだから、そのくらい分かってくれないとな」
 タカシくんは、もう一度うなずきました。
「よし、だったら捨てた人形、すぐ拾って来い」
「はーい」
 そう答えたタカシくんは、集積場に向ってとぼとぼ歩きだしました。

 うーむ、いかん、いかんぞ、タカシくん。誕生日におばあちゃんからもらったプレゼントが気に入らないからといって、捨てようとするとは。お母さんが怒るのも無理はないし、お父さんの言うとおり、プレゼントは単にモノではなくて贈った人の気持ちがこもっているものじゃからな。童話や児童文学といったジャンルでは、こうした教訓を伝えるために描かれた作品は少なくない。この作品も、人として大切なことを教えてくれる作品といえるじゃろう。
 さて、今回はちょっとむずかしい話になるんじゃが、大事なことなので聞いて欲しい。今回の作品じゃが、話としてはちゃんとまとまっているし、どこか書き方に欠陥があるというわけでもないんじゃ。作者が伝えたかったことは、まさにお父さんの台詞のとおりじゃろう。ただ、せっかく物語を創るんじゃから、子どもの読者にその教訓を実感として理解してもらうための工夫があると良かったんじゃなかろうか。
 伝えたいことはお父さんの言うとおりなんじゃが、これは大人によるお説教になっておる。タカシくんの怪しい行動からストーリーは始まっておるが、最後まで読むと読者はお父さんと同じ位置でタカシくんを見下ろしているような感覚になるんじゃなかろうか。つまり、この話はどちらかというと大人の目線で書かれているということじゃ。そして、タカシくんが本当にお父さんの話を理解して反省したか、おばあちゃんへの感謝の気持ちが生まれたかも、この作品からは読み取りにくい。
 では、どうしたらいいじゃろうか。それは、タカシくんがなんらかの体験を通して自分の過ちに気づき、おばあちゃんの気持ちにも気づいて、その好意に感謝するという物語にするといいんじゃ。それならば、どうしてタカシくんの行為がいけないことなのかも理解しやすくなる。そして、物語はイメージを自由に膨らませて描いて良いのじゃから、現実ではあり得ない出来事を考えて創作しても良いじゃろう。いかに読者にインパクトを与えることができるか。物語のインパクトが強ければ、教訓やメッセージも自然と読者の心に残るというものじゃ。
 しかし、考えてみると、わしはだいぶ長いこと、プレゼントなどもらっていない気がしてきたぞ。気持ちはちょっとでもいいから、誰か、わしにプレゼントをしてくれんかのう。

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