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執筆虎の巻(エッセイ篇/第三回 『読み物としての“味”を出すには?』)

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「紅葉を訪ねて」
ペンネーム  加藤あずさ
 今年の紅葉は例年になく美しいと、電車で隣に座っている若い女性の二人連れが話していた。どこにいったのかな、何となく心が動いた。
 そこへダイレクトメールが届いた。なんというタイミングの良さ、北と南の紅葉を訪ねる旅の案内だったのである。
 仙台の奥座敷といわれる作並温泉付近の紅葉を楽しみ、翌日愛知県の香嵐渓で川辺をゆっくり散策するというもの。早速申し込んだ。
 作並温泉付近の山々は赤に黄色に色づいて、青い空に照り映えて美しい。車窓から周りの景色を十分楽しんだ。そのうちに一面に雲が拡がり視界を狭くしたと思うと細かい雪が山を隠した。バスのガイドさんが言った。
「こういう体験もあまりありませんね。皆さん心掛けが良かったのでしょう」
 翌日は、そこから大きく離れてフェリーで愛知県へそして香嵐渓へ。日曜なので混むだろうと代わったガイドさんが言っていた。
 朝出発したころは大した混雑ではないように思われたが、高速道路を降りて一般道路に入ったころから車が増え始め、やがて人の足よりも遅くなってしまった。
 時間が無くなりそうということで、車中でお弁当を使う羽目になった。食べ終わっても車は一向に進まない。《あと二キロ》という辺りでとうとう歩きたいという声が出た。
「そうですねえ、何時に着くか見当がつきませんしねえ」とガイドさん、
「私、歩きまーす」
 若い二人が腰を上げた。私も私もと半数以上の人が車を降りて香嵐渓へ向かった。歩いても歩いても到着しない。
 帰りの人とすれ違った。すれ違いにこんな声が聞こえた。
「この人たちもあと二キロだって、だまされたんだよ、きっと」
 紅葉はきれいだったが、散策は十五分ほどに終わった。

 タイミングよく舞い込んだ旅行案内に誘われて出かけた、紅葉めぐりのツアーについて綴った作品じゃな。それにしても2日間で仙台と愛知の名所を巡ろうというのはなんとも贅沢じゃが、ちょっと無謀な気がせんでもないぞ。案の定といってはなんだが、初日は思いがけなく珍しい景色に出遭えたものの、翌日はちょっと納得の行かない結果となったようじゃ。いいことがあれば、悪いこともある。得てして人生とはこういうものかもしれんのう。
 しかし、このエッセイはなにやら物足りない。それというのも、ここには起こったことの経緯が綴られているだけだからじゃろう。出来事だけを書いたのでは人を楽しませるエッセイとは言い難い。これではむしろ日記かレポートといった文章じゃ。この著者ならずとも同じツアーに参加した人ならば、同じような文章が書けるはずじゃ。
 そもそも著者は、この作品を通して何を表現したかったのじゃろう。ツアーは慎重に選んだ方が良いという読者への助言も兼ねた自身の反省か、ツアーに不備はあったがやっぱり紅葉は美しかったということか、あるいはもっと別のことか。せっかくちょっと変わった体験をしたのじゃから、そこで疑問に感じたことや気づいたこと、考えたことがあったはずじゃ。同じ出来事でも人によって感じ方が違うのだし、表現の仕方次第ではつらい出来事もユーモラスな読み物になるはずじゃ。自分なりの視点を持ち、それを表すことで作品は個性的となるわけじゃよ。それでこそ読者が楽しめる作品じゃろう。自分の感覚や、物事の捉え方を打ち出すことが大切なんじゃな。
 ところで、わしなら紅葉狩りのあとは作並温泉に浸かってせっかくなので雪見酒、翌日のことなど気にせずにのんびりと過ごすのが性に合っているがのう。

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