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執筆虎の巻(「作品講評」篇/第九回 『物語世界のリアリティを考える』)

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「作品講評9」
 
今回取り上げるのは、新任の高校教師の体験を綴った小説『赤い花と青い森の島で』(作・佐山啓郎)という作品じゃ。タイトルにもあるように、主人公の青年教師が赴任したのは離島、東京都下の伊豆大島の定時制高校なんじゃ。特別に劇的な展開があるストーリーではないんじゃが、物語世界に読者を引き込む魅力が確かに具わっておる。今回はその理由を探ってみよう。

本書では、東京オリンピックを翌年に控えた昭和38年の春から約2年間の新米教師の日常が描かれておるが、赴任先の島内の風景など、的確で細やかな描写が物語のリアリティを支えている作品じゃ。そして何より、主人公の心理を丁寧に描き出している点が読者を引き込む魅力になっておる。

主人公が島に向かう船上から物語は始まるが、その時の様子は例えば次のように表現されておる。「甲板の上に立ってみれば盤石の安定感であるが、船に身を任せて出発する彼自身の頼りなさは逆に言いようもないほどなのだ」。またその一方で「その島の高校で、新任教師として一人で暮らすことになる。それを思うと妙に気負った感情が込み上げてくるのを感じた」というのじゃ。ここには期待と不安、緊張と高揚感の混じった心持ちが表現されておる。

そんな主人公もやがて、教師の仕事や島の暮らしに次第に馴染んでいくが、その過程もまた実によく描かれているのじゃ。熱血教師というほどではないが、若い教師らしく理想のようなものもあって、それゆえ現実を目の当たりにして葛藤や苦闘もする。島の娘に抱く恋心に戸惑い、また、人間関係のしがらみなどに戸惑いもするが、元は純朴な島の人びとの在りように共感したりもする。そうした経験を積みながら、主人公が教師としても人間としても確かに成長していると感じさせるところが本作の大きな魅力になっておる。

的確な描写によって臨場感のある場面を演出できるし、巧みな心理描写によって読者の感情移入を誘うこともできるのじゃ。ドラマティックなストーリー展開がなくても、読者の関心を十分に引くことができる、ということを知るべし。

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