自費出版・流通出版・執筆のことなら文芸社へ

自費出版・流通出版は気軽にSite執筆・出版の応援ひろば
よむ人からかく人へ。ここは表現する人を応援する著者のための『ひろば』です。ご相談・お問い合わせは…「なんでも相談室」へ

執筆・創作・自費出版・流通出版のことなら【気軽にSite 執筆・出版の応援ひろば】トップへ > 執筆虎の巻(小説篇/第三回 『活き活きとした物語を描くポイントとは?』)

執筆虎の巻(小説篇/第三回 『活き活きとした物語を描くポイントとは?』)

"
「No Future」
ペンネーム  ゲル
 シゲルこと俺とビカールとチャボとジョーの四人がバンドを組んだのは、二年も前のことだった。フィードバックノイズを随所に取り入れたポストロック志向の音楽をやろうと話がまとまって、バンド名は『ストップ・モーションズ』にした。主導権を握っていたのは俺だった。週に二度、俺らは近所のスタジオを借りて練習に励んだ。その後はメンバー全員でうらぶれた居酒屋に行くのが決まりだった。安い酒をひたすら呷って、バンドの方向性についてよく話し合った。音楽をかじったことのあるやつならば誰もがする、星の数ほどあるありきたりの話を酔いつぶれるまで延々と続けた。
 本拠を置いてライブを行おうということになり、オーディエンスのノリも悪くない、老舗のとあるライブハウスにデモを持って売り込みに行った。そのハコは駅からもわりと距離があって、とても小さなキャパだったが、売れっ子のバンドもたまにやってきた。こういった小ぢんまりとしたライブハウスならではの独特の雰囲気に、オーディエンスは酔いしれ、音楽に漬かって非日常の世界を存分に楽しむものなのだ。音楽を愛するオーディエンスが多くいるから名を売るには絶好のライブハウスだったけれども、出演するにはライブハウスが行うオーディションにパスしなければならなかった。

 今日が大切なオーディションの日だ。普段であれば、こんな早い時間にライブハウスへと足を運ばないところだが、今日は違う。なにせ俺らにとって特別な日だから。駅からの道のりをのそのそと歩くだけだが、大荷物を抱えているから汗が噴出してくる。俺らがライブハウスにつくと、もうすでに何組かのバンドが見える。ストップ・モーションズの出番は四組目と言われて時間があったから、客席側からしばらく眺めることにする。PAスタッフが急になにかにがなり立てはじめ、場の空気が悪くなる。一組目の演奏を観て、二組目がステージに上ったあたりで俺らは控え室に戻る。メンバーと軽く打ち合わせをしていると、あっという間に順番が回ってきて演奏になる。人前で披露したことがなかったからメンバーはみな緊張している。
 ドラムのジョーのアタックが開始から弱い。二曲目以降、突っ込んでしまって音が走り、バンドとしての演奏は完全に崩壊する。拍車をかけるかのように、ボーカルで紅一点のチャボは始終音程を外してハスキーボイスを披露してオーナーをあきれさせる。俺の巧みなギターテクニックをもってしてもそれらをカバーすることはできず、バンドとしての実力が備わっていなかった俺ら四人は当然ながら落選してしまう。
「ごめん」
 ジョーとチャボの二人が力なく呟いた。

 今回の作品は、4人組のロックバンドの活動を描いた作品のようじゃな。物語の語り手でもある主人公はそのリーダー格で、音へのこだわりも相当あるらしい。バンドの方向性も決まって、なかなかみんな意欲的なようじゃ。しかし、活動の場を広げようとライブハウスのオーディションを受けるも、首尾は芳しくなかったようじゃのう。この失敗でバンドは崩壊してしまうのか、あるいは、再挑戦に向けて練習を積んでリベンジを果たすのか、今後の彼らがどうなっていくのかが楽しみな展開ではある。
 バンド結成からオーディションを受けるまでのいきさつ、オーディション当日の様子も一通りそつなく描かれておる。ただ、どうも話の展開にメリハリがなく平坦な印象を受けるのじゃ。それは全体が事情や状況の説明に終始しているためじゃろう。前半の事情説明はよいとしても、特に後半のオーディションの場面はより臨場感のあるものにしたい。そうするためには、メンバーの表情や「俺」の心理を描写して、その場の空気を表現したいところじゃ。それも単に「緊張している」といった説明ではなく、せっかくバンドの当事者が語り手なのだから、リアルタイムの感覚で表現できるといいじゃろう。例えば、「ベースのビカールの顔をチラリと窺うと、無心というより心ここにあらずの状態だ。不甲斐ないメンバーへの苛立ちが、俺のギターをますます孤立させていくのがわかる。ギターを弾くことがこんなに苦しく感じられたのは初めてだ」のような具合じゃ。初めて人前で演奏する緊張感、上手くいかないことへの焦燥感、不安定になっていく精神状態を主人公の言葉で表わすことで、読者は彼らが置かれた状況をリアルに感じることが出来るのじゃ。
 小説は出来事の経緯を描くだけでは充分とはいえん。そこに登場する人物の心理や感覚といったものが描かれて、血の通った活き活きとした物語となるのじゃ。この作品も、是非とも熱いロック魂を響かせる物語にして欲しいところじゃな。

"



バックナンバー


文芸社の気軽にSiteへお越しの方へ
【気軽にSite執筆・出版の応援ひろば】では自費出版・流通出版のご相談を随時受付けています。また出版だけではなく執筆・創作のヒント、きっかけになる情報の提供もしております。文芸社の気軽にSiteでは書きたい人、これから執筆・出版に挑戦したい人の活動を本気で応援しています。